年金を繰り下げると損か、得か?

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老夫婦のイメージ
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年金の「繰り下げ需給」とは、公的年金をもらい始める時期を繰り下げる、つまり遅らせる制度です。

需給を繰り下げると、1ヶ月遅らせるごとに、受給額が0.7%増えます。

どちらが得かといえば、当面の生活費に困ることがなく、かつ絶対に長生きするとわかっているなら、繰り下げた方が得といえるでしょう。

ですが、現実はそんなに単純ではありませんよね。

年金をもらい始めるのは本来65歳からですが、申し出により70歳まで月単位で遅らせることができます。

当然ながら、しばらくは無年金での生活になりますが、その代わりにその後の受給額は本来の水準より高くなり、アップした金額が終身で続きます

ざっくりと、「もらい始めてから何年生きれば本来水準に追いつくか?」を計算すると、額面では約11年11ヶ月となります。

仮に、上限である70歳まで繰り下げたなら、82歳直前まで生存すれば受取総額が等しくなり(額面べース)、それ以上長生きすれば有利になります。

もちろん、最終的には個々それぞれの事情によりますが、検討するに値するのではないでしょうか。

 

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額面ではなく手取りベースで検討する

上記では額面ベースでの見方を紹介しましたが、実際に繰り下げ受給を検討する際には、考慮すべき点があります。

 

損得勘定のイメージ

 

通常、年金は所得税や健康保険料、介護保険料が差し引かれて給付されます。

老後の生活設計を考える上ではやはり、繰り下げの効果は手取りべースで考えるべきでしょう。

 

下表は、東京都で扶養配偶者(年金収入70万円)を持つ人を対象にした、65歳時点での年金の「額面-手取り」の概算です。

※金額は抽出、端数は省略

額面 手取り
60万円 53万円
70万円 63万円
120万円 112万円
180万円 167万円
210万円 191万円
240万円 210万円
270万円 231万円
300万円 255万円
390万円 325万円

表中から、たとえば65歳からの本来受給額面が年210万円の人について手取り金額を見ると191万円です。

この差額が税と社会保険料にあたります。

この人が仮に受給を70歳まで5年(60ヶ月)繰り下げるとどうなるかを検証します。

まず、額面は1ヶ月0.7%増×60ヶ月=42%増となり、

210×1.42≒300万円

となります。

次に、この金額を基準として税や社会保険料が差し引かれ、その結果手取り金額は表にあるように255万円になります。

つまりこのケースでは、手取り金額が191万円→255万円へアップ、割合にして約34%増えるというのが、繰り下げの実質的な効果です。

額面では42%増、手取りでは34%増ですから、手取りベースでみるとその効果はやや小さくなり、損益分岐の時期も、手取りでみると約15年と、前述した11年11ヶ月という額面べースよりも先延ばしになります。

つまり、繰り下げ受給の効果は大きいけれど、決して過大視してはダメだということです。

金額別にそれぞれ試算しても、概ね手取りべースの繰り下げ効果は控えめ傾向にあります。

これは、受給額面金額が高くなるほど、税や社会保険料の負担が大きくなりやすいという事実が大きく影響しています。

 

ただし、受給額面が70万円(手取り63万円)と少なめになると状況は異なります。

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前例と同様に5年繰り下げると、その額面は42%アップして約100万円となり、そのときの手取りは92万円。

比率にすると46%増えることになります。

額面が低くても一定額の社会保険料はかかることなどから、手取りべースの方が繰り下げ効果が大きい場合もあります。

前述したとおり、繰り下げは1ヶ月単位で制定できるので、自分の本来の額面金額と想定する繰り下げ期間後の手取金額を比べてみるとよいでしょう。

※社会保険料などは自治体により異なるため要確認。

 

 

繰り下げでは加給年金や住民税も考慮する

老人と年金

そのほか、繰り下げを考える際に留意したいポイントとしては、加給年金と住民税です。

加給年金とは、厚生年金に20年以上加入し、かつ年下の妻がいる場合に、その妻が65歳になるまで約39万円の年金が上乗せされます。

ところが厚生年金の繰り下げを選ぶと、この加給年金はもらえません。

 

 

それを避けるためには、基礎年金部分だけを繰り下げるという選択肢があります。

加給年金制度は継続予定なので、該当する場合には一考の余地ありです。

次に、住民税についてですが、年金収入が基準額以下の場合には、住民税が非課税になります。

※基準額は以下のとおり。金額は公的年金控除を差し引く前。

  単身者 扶養配偶者あり
生活保護基準1級地 155万円以下 211万円以下
同 2級地 151.5万円以下 201.9万円以下
同 3級地 148万円以下 192.8万円以下

 

住民税が非課税だと、

  • 介護保険料が軽減される
  • 医療費の自己負担上限が少額になる
  • 自治体による各種補助の対象になる

などの可能性があります(要確認)。

ところが、年金受給を繰り下げることで受給額面が増え、結果的に非課税の対象から外れてしまうことがあります。

これらの恩恵が受けられないことの損失の方が大きい場合には、あえて繰り下げはせずに、本来の年齢から受給するというのも一つの選択肢です。

非課基準や内容の詳細は、自治体の税金担当窓口に確認してください。

ただ、税制は頻繁に見直しされるので、上表にある1~3級地の指定は変更されるかもしれませんし、公的年金等控除額についても将来的には削減される可能性が高いので、実際には非課税基準はとても変化しやすいです。

なので、過度な拘りは捨てて、繰り下げによって生涯年金収入を増やせる利点を生かすことも併せて判断してください。

 

長寿化によって平均余命は伸び、老後期間も長くなっています。

→厚生労働省「主な年齢の平均余命」へ

「人生100歳時代」は、もはや現実のこと。

当面の生活資金が確保できるならやはり、年金を繰り下げて受給金額を増やす方が将来の安心につながります。

とくに寿命がより長い女性は、繰り下げの恩恵が受けやすいでしょう。

 

公的年金は長生きリスクに備える保険

受給時期に迷ったときは、「年金は本来、長生きリスクに備える保険」という基本に立ち返って考えることで、自分にとって、あるいは配偶者にとって最適な選択ができるはずです。

そもそも年金は、自分で請求しない限り給付が始まらないので、65歳以降も生活に余裕がある間は請求をしないでおいておくのも一手です。

そうしておいて必要になったときに申請すれば、結果的に増額されて給付が始まることになります。

また、受給期間中に受け取っていない中の年金を一括して請求することも可能です。

その場合、年金額は増えませんが、一度にまとまった資金を確保できるので、覚えておいてください。

 

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