
確定拠出年金とは、企業や個人が毎月一定額の掛金を拠出して、自分で運用する年金です。
簡単に言うと、支払った掛金が自分の口座に積み立てられ、それを運用して得られた給付金が自分に戻ってくる仕組みです。
そのため、運用の結果次第で、将来受け取れる年金の額は違ってきます。
確定拠出年金には、企業が決まったルールに基づいてお金を出す企業型と個人が自分で掛金の金額を決め自分でお金を出す個人型(=iDeCO)がありますが、ここでは「自分年金」とも称されるiDeco(イデコ)についてお伝えします。
iDeCoで運用する
公的年金が老後資金の柱のひとつであることは間違いありません。
その一方で、昨今よく耳にする長生きリスクには、公的年金だけでは対処できないのも事実です。
そのため、貧乏な老後を回避するためには、「自分年金」をつくる必要があります。
資産運用の手段には、貯蓄型の保険や株式投資、NISAなどいろいろありますが、ギャンブル性の高い投資で虎の子の資産を失ってしまっては元も子もありません。
そこで今、オススメできる運用が、個人型確定拠出年金=iDeCoです。
iDeCoは、節税メリットが大きく、かつ運用はプロにお任せするので、投資ビギナーでも安心して加入しやすい特徴があります。
また、2017年1月には、専業主婦(夫)や公務員、企業型の確定拠出年金に加入している人にまで対象が広がり、より多くの人に積み立て運用のチャンスができました。
iDeCoに加入できる人、できない人
大前提として、個人型確定拠出年金iDeCoに加入できるのは60歳未満の人です。
残念ながら現状では60歳以上の人は加入できません。
ただし、
厚生労働省は運用成果によって年金額が変わる確定拠出年金について、掛け金を払い込める期間を延ばす方向で検討に入る。上限を60歳から65歳に上げる案が軸だ。期間が延びれば、老後に受け取る年金は増える。60歳を超えても働く人が増えているため私的年金の仕組みを充実させ、先細りする公的年金を補う。
2018/8/31付 日本経済新聞 電子版より
という動きが出ているため、年齢制限については今後変更される可能性はあります。
また、日本国内に居住している人のみが加入できる制度なので、海外に住んでいる場合は、たとえ国民年金の任意加入者だとしても、加入できません。
さらに、国民年金の納付を全額or一部免除されている場合や学生納付特例などで猶予されている場合もNGです。
以下に、わかりやすいように、加入可能者を一覧にまとめておきます。
働き方 | 加入条件 |
自営業・フリーランス |
月額6万8000円まで 国民年金のみ加入している第1号被保険者。自営業、フリーランス、派遣や非正規社員も加入できる。 |
勤務先に企業年金がない会社員 |
月額2万3000円まで 会社の厚生年金に加入している第2号被保険者。 |
企業型確定拠出年金に加入している会社員 |
月額2万円まで 企業型確定拠出年金があっても手薄な場合など。 |
確定給付型の企業年金がある会社員 |
月額1万2000円まで 確定給付型企業年金があっても手薄な場合など。 |
公務員 |
月額1万2000円まで |
専業主婦(夫) |
月額2万3000円まで 公的年金が基礎年金のみの専業主婦(夫)も加入可能。 |
iDeCoの働き方別ポイント
個人型確定拠出年金iDeCoは、すべての加入者に有益です。
以下に、働き方別のメリットや注意点をお伝えします。
サラリーマン・OL
サラリーマンやOLがiDeCoを始めるべき最大の理由は、消えゆく企業年金へのリスクヘッジでしょう。
企業年金が経営を圧迫したり、厚生年金基金の解散が相次いでいる中、受け取りが約束されている確定拠出年金は心強い制度です。
何より、会社に任せきりにせず、自分で将来受け取れるお金を増やせるので、安心感が違います。
- 所得控除による節税効果が大きい
- 転職しても資金を持ち運んて積み立てを継続てきる
といったメリットがあります。
公務員
公務員がiDeCoを始めるべき理由は、年金制度の変更によって減ってしまった年金の上乗せでしょう。
かつては、老後も安泰と言わていた公務員ですが、月2万円程度の職域加算が廃止された上、平均で約400万円ほど退職金が減額になるといわれています。
そうなると、公務員といえども老後資金を増やすために自助努力したいところですが、拠出限度額が月額1万2000円までと低額なので、コスト比率には注意が必要です。
- 昇給や退職金の予測かつきやすく、掛金や受け取り見通しが立てやすい
というメリットがあります。
自営業・フリーランス
自営業者やフリーランスがiDeCoを始めるべき理由は、何といっても、公的年金だけでは足りない老後資金に厚みを増すということ。
公的年金が国民年金しかない自営業者は、拠出限度額も高く設定されています。
退職金がないので、受け取り時の控除をフルで活かせる可能性も高く、小規模企業共済と併用すれば、受け取り時の節税効果がさらに大きくなります。
また、事業が万が一のときも、iDeCoは差し押さえの対象外であることも安心材料です。
ただし、途中で資金繰りに困っても引き出すことはできないため、掛金額は余裕資金の範囲に収めるのが鉄則です。
- 拠出額の上限が高く、積み立てるほど高い節税効果を発揮
- 退職金がない分、受け取り時の非課税枠を使える
といったメリットがあります。
パート・専業主婦(夫)
パートや専業主婦(夫)がiDeCoを始めるべきりゆうは、自分名義の資産が準備できること。
専業主婦(夫)はもちろん、年収103万円以下のパート従業者も、もともと所得税と住民税を払っていないため、積立金の拠出時には節税できません。
また、配偶者の所得控除にも使えません。
それでも、運用時と受け取り時のメリットは遜色なく受けられ、いわば「主婦(夫)の退職金」が準備できます。
- 主婦でも加入期間に応じて、退職所得控除が使える
- 専業主婦(夫)から復職しても拠出を継続できる
といったメリットがあります。
パート従業者の場合、年収103万円を意識して働くケースが多いです。
これは、給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円を差し引いて所得がゼロになるラインです。
しかし、この103万円に確定拠出年金での所得控除である小規模企業共済等掛金控除を合わせて利用すれば、所得税を払うことなく収入アップが可能です。
目安は年収127万円(月額2万円アップ)で、こうなれば大きなメリットとなり得るでしょう。
ただし、従業員501人以上の会社に勤める場合には、年収106万円以上で社会保険に加入することになるので、そことの見極めが必要になります。